About Sound Therapy音療について

「音」と「人」のより良い関わり「音療」を実現する
4つの要素

私達は「音」と「人」のより良い関わり(音療)を実現するには、 (1)創造 (2)演奏 (3)エンジニアリング (4)伝達 の4つの要素があると考えています。

1. 創造「自然界に学ぶ、音の不思議」

自然界には何一つ「直線」が存在しません。曲線や不均一さがあるからこそ、様々な非線形倍音が生まれます。国立精神・神経医療研究センターの研究では、自然界に多く含まれる可聴帯域外の高周波帯域成分が、自律神経系や内分泌・免疫系を司る基幹脳ネットワークを活性化させることが分かっていますが、この高周波帯域成分はまさに非線形倍音の織りなす技です。それだけでなく、自然界には音、光、磁場・・・まだ発見されていないものも含め、様々なタイプの「振動(vibration)」が含まれており、これらが相まって人間に安らぎを与えると考えられています。

R.Osu, M.Morimoto, M.Honda, T.Oohashi(2010) 基幹脳ネットワーク活性化効果をもつ超高周波成分の帯域構成に関する検討 ASIAGRAPH 2010 in Shanghai

これまでのスピーカーやヘッドホンは、電磁誘導もしくは圧電変化を利用して、コーン紙を機械的に前後に動かす方式で音を生成していますが、この動きは非常に「直線的(linear)」です。どの帯域も均一にソースを再生できるというメリットがありますが、春に鳴くひばりの声や、熟練されたバイオリニストの音のように、極小のエネルギーでかなりの遠達性を持たせたり、高次の非線形倍音を再現・生成したりするのはなかなか難しいことです。

「声」も自然界の不思議の一つです。私たちが声を聞く時、怒った声なのか、優しい気持ちの声なのか、言語が分からなかったとしても感じ取ることができますね。これは、音を発する側の「想い」が、音、振動・・など様々なエネルギーの形で伝搬するからだと考えられます。

また、あらゆる自然界の営みの中でも人間だけが行う、非常にユニークな行為の一つに「作曲」があります。これもまた違うアングルでの「音の創造」ですね。音符の羅列だけでなく、どんな音色を使うのか、どのように音を発するのか、それらすべてが相まって、結果的に人を幸せにしたり、戦いに向かわせたり、トランス状態に陥れたりします。

物理・音響・医療・芸術・教育など様々な観点から音を捉えてゆく中で「なぜ音を出すのか」「出した音はどのように人や環境に影響を及ぼすのか」を意識する感性を育むことがとても大事だと考えます。

2. 演奏「人の技とこころが紡ぎ出す、音のいのち」

演奏という行為もまた、自然界の営みの中で人間だけが行う独特なものです。どの文明でも、どの時代でも演奏が行われてきました。演奏は人々の気持ちを一つにするツールであり、時には人を戦いに向かわせ、時には人を祈りに向かわせます。

優しく効率的に奏でられた楽器の音色は、湾曲した楽器の筐体や弦から、自然界にも存在するような様々な非線形倍音を生成します。一方で、激しく打ち叩く演奏は、楽器の塑性変異の限界に達し、直線的な粗密波を衝撃として生成します。これは空気抵抗の影響を大きく受けるため、遠達性の悪い音、人には刺激のある音として届きます。

演奏にいのちが吹き込まれるためには、1)音楽の解釈(interpretation) 2)演奏の技術(technique) 3)曲目の選択(musical variation) 4)表現の手段(expression method) 5)内なる想い(inner urge)の5要素があると考えます。

自然界はあるがままに音を奏でるのでバイアスがありませんが、人が音を奏でる場合は、この5つのバイアスがあります。このバイアスをどう解決するかが演奏上の課題となります。そのためには技術面、精神面の両方において、自分を知り、何を努力し、何を委ねるのか、を知らなくてはなりません。

3. エンジニアリング「音を整える、巧の技」

現代では、創造し奏でられた音を「録音」することができますが、ここに、大きな落とし穴があります。先に触れた自然界の音が、電気信号に機械的に変換されることによる「誤差」がなぜ生じるのか、それを聴感上・体感上補正・再現するにはどうしたらよいのか、を考える必要があります。

もしくはそれを逆手にとって、処理後の音のイメージから遡って、素材収録を行いコラージュアートのごとく音の世界を作り上げる技法もあります。

エンジニアリングの要素としては、1)音量(loudness) 2)周波数特性(frequency) 3)位相(phase) 4)響き(acoustics) 5)ハード・ソフトの知識(knowledge of tools) です。

この5つをバランスよく身に付けることで、技術の限界(例えばマイクの収音特性の限界、部屋の響きの限界など)をアイデアで乗り越えることができるようになります。そして、目的のためにより適切な音作りを、最小限のコストと時間で実現できるようになります。これは音楽を通じて社会奉仕をしていくために、とても大事なことです。

4. 伝達「音を届ける、技術とこころ」

コンサートというリアルな場で、また音響装置を用いてのバーチャルな場で、いずれにおいても必要になるのが、1)的確な技術 2)ホスピタリティ です。

「的確な技術」とはa)音響(sound reinforcement)技術の知識、b)音を体験として届けるための、多次元(時間・空間・温度・風・光・香り・・)プランニングスキル、c)運営実務に関わる人・物・金・著作権許諾調整などのマネージメントスキル、d)プロモーションに関わるPR・マーケティングスキル、e)協賛団体や関係者とビジョンの共有を図り資金繰りを組み立て、商材を企画するファンディングスキル などがあります。すべて一人でこなせる、という方は稀だと思いますが、できない分をどう補っていくのかを考える必要があります。

「ホスピタリティ」は、上記の技術を用いながら、もしくは足りない部分をパートナーと補完し合いながら、音を届ける際の「相手を思いやるこころ」のことを言います。音楽家と直接関係ないように思える、コンサートの受付業務や、電話対応、営業・・といった職種も同様にこの「思いやるこころ」が必要とされます。お客様にとってはコンサート会場に入るところから、出て帰路に着くまで、そのすべてが「体験」です。運営チームの内たった一人でもこの「相手を思いやるこころ」が共有できないままスタートしてしまったら、この「体験」は台無しになってしまいます。逆に、一人が「相手を思いやるこころ」を持つことができれば、チーム全体が変わってゆき、それはお客様に必ず伝わります。

この「相手を思いやるこころ」は努力でできる部分と、できない部分があるように思います。「自分が受け取った愛以上に人を愛することは難しい」という現実があるのではないでしょうか。

だからこそ、誰か一人の「相手を思いやるこころ」は、不可能を可能にするほど、尊いものなのです。

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